オススメでっす その2
「突堤のある風景」坂上弘著
昭和三十年代という時代がここでは問題としてある。
それは経済が戦後の荒廃から立ち直って自立し、やがて膨張していく契機をはらむ時代です。
敗戦後の農地改革や教育改革や財閥解体の効果がそろそろ実を結びつつありました。
しかし、この小説に描かれるのはそういう外的状況の変革ではありません。
家父長制社会の否定という、実に外側から見えにくい、内面的な変革であり、まさしくそれは文学の持ちうる主題なのであろう。
今では昔がたりのようになったが、戦前の家父長制の家族制度では、長男が家に残って両親や弟妹の面倒をみる、というのが当たり前のようになっていた。