オススメでっす その4
「突堤のある風景」坂上弘著
信一は、会社からヘルパーとして特約販売店の応援に出向させられることになります。
中央線の沿線のムサシ商会というところですが、ここでの社長や鮫島や三津谷さんという女性の像が鮮明なので、経済活動が胎動期にあった昭和三十年代の様相が、おのずから浮き出てくるような具合です。
本社の社長が演説の中で「戦時中の特攻隊で、多くの若い人々が、悲惨なことになりましたが、彼等は、皆、喜んで行った、とわたしは思っております。日本の精神文明には、これがあります。わたしも会社の経営を、こういった精神でやっている」
と言うのも、それについて信一が「ともかく、自分はちがう、この社会は誰の生き方を真似なければならないということはないのだ」と思うのも、昭和三十年代ならではと私には思えるのです。